若き日のお釈迦様の宮殿

景福宮の中庭香遠亭、あまりにも仏教的な


 せっかくソウルに来たのだからと駆け足で名所をまわったりしたが印象的だったのが李氏朝鮮の王宮・景福宮キョンボックン)の中庭、大きな池と真ん中の島に建てられた香遠亭(ヒャンウォンジョン)。朝鮮王朝末期の高宗による建立。島に渡る木橋に酔香橋(チィヒャンギョ)という名前をつけ、そこで優雅に散歩を楽しんだらしい。景福宮紫禁城を模し儒教の思想や伝統にかなったものとされるがこの香遠亭と酔香橋は釈尊の王子時代の3つの宮殿を模したのではないかと思われた。

『比丘たちよ。出家する前の私は、たいへん幸福な生活の中にあった。私の家には池があって、美しい蓮の花が浮かんでいた。部屋には香がただよっていたし、着るものはすべて最上のカーシー産の絹であった。また、私のために三つの宮殿があって、冬には冬の宮殿、夏には夏の宮殿、春には春の宮殿に住んだ。』

 とこれはうる覚えなんですが中村元博士の穏やかな朗読が自然に聞こえてくるような気がした。高宗はどこかで仏教の僧と交流があったのか、それとも上流階級の教養としてこのエピソード知っていたのか。「池と美しい蓮の花と漂う香」釈尊へのあこがれが香遠亭を建てたのではという恣意的な解釈だがざあっと記録をみただけでは見えてこないなぁ。